「同期はできているのに、私にはできない」
20歳の春、私は新卒で介護福祉士として働き始めました。
学校で習ったことを、実際の現場で活かせる。
そんなことを楽しみに、心躍らせて入社した4月。
でも、実際に働き始めてみると、毎日が「分からないこと」だらけでした。
学校で習ったことと、現場は全然違った
スタッフの名前、入居者様の名前。
それ以外にも、覚えなければいけないことは山ほどあります。
でも、一番戸惑ったのは、学校で教えてもらった介助方法やリネン交換の仕方が、現場では全然違ったこと。
「ねぇ先生。全然違うじゃん。このやり方、聞いてないよ」
そんなことを心の中で思いながら、毎日仕事をしていました。
学校では「正解」だったやり方が、現場では通用しない。
20歳の私には、それが大きな壁でした。
「同期はできているのに、私にはできない」
地元の施設に入社したため、同い年で同じ年に入社した、顔なじみの子もいました。
その子も新卒なのに、学校と現場のギャップを気にする様子もなく、卒なく仕事をこなしているように見えました。
もちろん、今思えば、その子にもその子なりの苦労があったのだと思います。
でも当時の私は、そんなことを考える余裕なんてありませんでした。
ただ、
「同期はできているのに、私にはできない」
そう思っていました。
そう思い始めると、不安はどんどん膨らんでいきます。
いつもならミスしないところでミスをしたり、余計なことまでしようとしてしまったり。
そして、そんなオドオドしている私に目をつけた人がいました。
「いつになったら覚えるの?」
新人だった私を、毎日のように責める人がいました。
「ねぇ。いつになったら覚えるの?」
「ここは学校じゃないんだよ」
そんな言葉を浴びせられる日々。
私だって、学校とのギャップに戸惑いながら頑張っている。
少しずつだけど、できるようになったことだってある。
そう思っていました。
それでも、職場にいるのに隠れて泣くこともありました。
「私、介護福祉士に向いてないのかな」
「辞めたほうがいいのかな」
そんなことを考える日もありました。
でも、頑張って勉強して介護福祉士になったんです。
だから、
「こんなことで辞めたくない」
そう思いました。
そして私は、介護長にすべて話すことにしました。
勇気を出して相談したら、環境が変わった
介護長にこれまでのことを話しました。
すると、その人が過去にも何人もの新人を辞めさせているということを知りました。
「私だけがダメだったわけじゃなかったんだ」
そう思ったことを覚えています。
その後、私は部署異動を勧められました。
そして、無事にその人と離れることができました。
でも、女だらけの職場には、また別の人間関係があります。
20歳の私は、そこで初めて、
「学生時代と変わらないような人間関係って、社会人になってもあるんだな」
なんて思ったりもしました。笑
「やりたいようにやっていいよ」と言ってくれた上司
異動した部署の上司とも、いろいろありました。
それでも、その上司は私の考え方や、やり方、気持ちを受け止めてくれました。
「やりたいやり方でやっていいよ。ここは、こう修正しよう」
そんなふうに言ってくれたんです。
否定されるのではなく、
「どうしたらもっと良くなるか」
を一緒に考えてくれる。
それだけで、人ってこんなにも変われるんだなと思いました。
少しずつ自信を取り戻していき、やがて私は、入居者様を楽しませる係の長を任せてもらえるようになりました。
そのとき、すでに入社5年目。
「やっと会社に認めてもらえた」
そんな気がしました。
退職するとき、みんなが泣いてくれた
そして、この会社を辞めるとき。
スタッフも、入居者様も、みんな泣いてくれました。
そのとき初めて、
「私がここでやってきたことは、ちゃんと誰かの心に残っていたんだ」
と思えました。
入社したばかりの頃は、
「同期はできているのに、私にはできない」
と悩んでいた私。
自分には何もできないと思っていた私。
そんな私でも、5年後には誰かを楽しませる仕事を任せてもらえていた。
そして、辞めるときに寂しいと思ってもらえるくらい、その場所で過ごすことができた。
それが、私にとっての答えだったのだと思います。
あの頃の私と、今の私
この記事を書きながら、20歳の自分を思い出しました。
あの頃は、同期より何もできていない自分を卑下して、それでも悔しくて、何度も立ち上がりました。
今の私は、あのときほど強く立ち上がることができません。
「昔の自分なら、もっと頑張れたのに」
そう思うこともあります。
でも、最近は少しだけ考え方が変わりました。
昔の自分と同じように頑張れなくてもいい。
あの頃の自分には、あの頃のペースがあった。
そして今の自分には、今のペースがある。
だから今は、
ゆっくりでいい。
そう思っています。
いつかまた、あの頃みたいに立ち上がれる日が来るかもしれない。
来ないかもしれない。
それでも今は、無理に立ち上がらなくてもいい。
自分のペースで、少しずつ進んでいこうと思います。

